幼少期からの英語学習は本当に必要? 脳研究者・池谷裕二先生が語る「早期英語教育の真実」

グローバル化が進む現代では、幼少期からの早期英語教育に注目が集まっています。その一方で、「日本語も未熟な段階から別の言語を学ぶのは問題ないのだろうか」「早くから英語を学んでも、使わなければ忘れてしまうのでは?」など、幼いころから英語を学ぶことに不安を抱く保護者の方も少なくないようです。そんな早期英語教育の疑問に対し、脳研究者で東京大学薬学部教授の池谷裕二先生が答えます。

「英語ができる」自信は子供の可能性を広げる

―― 早期英語教育については意見が分かれるところだと思います。池谷先生から見て、英語教育は幼少期から行うべきなのでしょうか?

池谷裕二先生(以下、池谷):大前提として、早期英語教育の必要性は個人の目標によって異なります。海外旅行で困らない程度の語学力を身につけたいというだけであれば、早期英語教育が必ずしも必要とは言えないでしょう。なぜなら、英語は第二言語として後から習得しても間に合うものだからです。この先、人工知能がますます発達してリアルタイムでの翻訳が可能になれば、英語を話せる必要性すらなくなりますしね。もしも、英語をファーストランゲージとして身につけたいとか、日本語と英語それぞれの感覚で思考できるようになりたいというのであれば、早期英語教育が必要だと思います。
ただ、そういった必要性とは別に、「英語ができる」ということが子どもの自信につながったり、可能性を広げたりするという点でも早期英語教育は重要です。私自身もそうでしたが、苦手意識があると英語が必要な場面ではどうしても消極的になってしまうんです。しかし、英語に対して自信があれば、自分の可能性を狭めることなく積極的にコミュニケーションがとれますよね。
また、理屈では分かっても、文化の違いを自分の感覚として理解するのは難しいですよね。その点、幼少期から英語という異文化に触れていれば、感覚的にも学ぶことができます。そういった観点からいっても、早期英語教育は意味があるのだと思いますね。

―― 具体的に何歳くらいから英語教育を始めるべきでしょうか?

池谷:バイリンガルのようになりたいのならば、早ければ早いほどいいですね。英語に触れる量によっても変わってくるので、英語漬けの環境であれば、2歳くらいから始めても十分だと思います。遅くとも9歳ころまでには始めたいですね。できるだけ幼いうちから、英語や外国文化と触れ合う環境に身を置いた方がいいです。

早期英語教育にデメリットはない

―― 母語である日本語を学習中の段階から英語に触れると、頭の中が混乱したり、脳の発達に影響したりしないのでしょうか?

池谷:そのようなことはありません。世界人口の約50%がバイリンガル、もしくはマルチリンガルであると言われています。もし幼少期に2カ国語以上の言語を学ぶことが脳の発達に悪影響を与えるならば、世界の半数の人が問題を抱えていることになってしまいますよね。
また、世界的に見ると、日本のようにひとつの言語だけを使うというのはむしろ少数派です。世界には約6,000もの言語があるので、「複数の言語を話せる/理解できる」というのは一般的なことだと私は思います。日本では多言語を操る人が少ないので、ネガティブな印象が広まりやすいのかもしれませんね。

―― 幼少期から2カ国語を学ぶと言葉の習得が遅れるという話も聞きますが、それは本当なのでしょうか?

池谷:日本語だけを教えていても、習得が早い子もいれば遅い子もいますよね。2カ国語を同時に学ぶ場合、脳の中では2つの言語を細分化して言葉を覚えていきます。そのため、人によっては多少遅れがみられることもあるでしょう。とはいえ、長い人生のうちの最初の半年~1年遅れるだけのこと。過剰に心配しすぎるのは良くないので、お子さまなりの発達スピードなんだと、見守ってあげる気持ちでいるのも大切だと思います。

―― 幼少期に英語をマスターしても、継続して使い続けなければ忘れてしまいませんか?

池谷:例えば、幼少期を海外で過ごした人でも、日本に戻ってから英語の勉強を一切しなければ、英語は下手になっていきます。なので、できるだけ英語を使い続けることが望ましいでしょう。ただ、もし間が空いてしまっても、幼少期にきちんと言語を「獲得」できている人は、学び直したときの戻りも早いです。私が大学で教えている学生たちを見ていても、幼少期に5年ほど海外で過ごしただけで、今では英語が苦手だという状態だったのに、学会の練習などで再び英語を始めると、伸びが非常にいいということがよくあるんです。私のように中学校から英語を習得した者から見れば、羨ましく感じてしまいます(笑)。

―― では、早期英語教育のリスクやデメリットはどんなことが考えられるでしょうか?

池谷:リスクやデメリットはあまりないと思います。強いて言うなら、ある程度のお金と時間がかかることくらいでしょうか(笑)。ただ、幼少期のうちにお金をかける方が将来的なメリットは大きいと思いますね。大人になってから学ぶよりも、習得率がいいですから。

学習ポイントは「体を動かしながら行う」「子ども同士で英語を話す」

―― 幼少期の英語教育で、英語をより確実に身につける方法などはありますか?

池谷:最近発表された早期英語教育に関する論文には、「英語をフィジカルなエクササイズと合わせて行うと習得が早く、その後の定着も良い」とありました。幼児にとって、体を動かすというのは基本的なことですよね。机に向かって英語を勉強するより、音楽や体操に合わせた方が身につきやすいというのは、納得感がありました。 また、子どもは大人ではなく、ほかの子どもの言うことをよく聞くように遺伝子に組み込まれているので、英語を話す友達がたくさんいる環境に入れてあげるのもいいと思います。

―― なぜ、ほかの子どもの話を聞くようになっているのでしょうか?

池谷:人間が狩りをしながら暮らしていた時代、大人が子育てできる環境ではなかったんです。父親は猟に行き、母親は乳飲み子に母乳を与えるか妊娠している状態でしたから。そのため、子どもはお兄ちゃんやお姉ちゃんの言うことを聞いて育つようになり、子どもたちのコミュニティの中でマナーなど社会的な学習をしていきました。そのような過程から、「子どもは子どもの言うことをよく聞くようになった」といわれています。例えば、海外に移住した子どもは、親と話す日本語よりも友達と話す英語の方が上達する傾向があるんですよ。それは、親とよりも、子ども同士のコミュニケーションを重視しているからなんです。

―― フィジカルなエクササイズと合わせて学ぶほか、子ども同士で英語を話すことが重要なのですね。

池谷:そうですね。集団生活の中ではジェスチャーや表情などから相手の感情を読み取る力なども育まれます。ネイティブの先生がそばにいれば、外国人ともより深いコミュニケーションを図れるようにもなるかもしれません。単純な語学の習得というだけでなく、幼いうちから英語を学ぶことは子どもの成長に大きなメリットになるのではないでしょうか。

早期英語教育には、英語力を身につける以外にもさまざまなメリットが存在します。異文化理解を深め、自信をもって英語でコミュニケーションをとれるようになるために、幼少期から英語に触れさせていきたいものです。

学習法は、習い事や教材を利用するほか、英語のCD・DVDを流すなどさまざまな選択肢が存在します。ただ、一定以上の英語量に触れさせ、英語を話す環境下に身を置くとなると、「インターナショナル幼稚園」や「プリスクール」が最適かもしれません。

早期英語教育を中心とした独自のカリキュラムを採用しているのが、バイリンガル幼児園「Kids Duo International」。卒園までの4年間で約3,000時間を英語で過ごすため、英語教育に関心の高い保護者の方から注目を集めています。
40年間にわたって培われた教育カリキュラムでは、語学以外の面にも注力。バイリンガル講師とのコミュニケーションや知能教育のほか、クラスメイトとの遊びを通して英語圏と日本の文化に触れられるなど、日本語と英語をバランスよく学ぶことも大切にしています。

池谷先生の語る早期英語教育において必要な環境が揃った「Kids Duo International」。早期英語教育にご興味のある方はもちろん、英語を学ばせようかお悩み中の保護者の方も、ぜひ一度「Kids Duo International」の説明会に足を運んでみてくださいね。

※説明会は園舎ではない場所で実施される場合があります。

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学 薬学部 教授
1970年生まれ。1998年に東京大学にて薬学博士号を取得。2002~2005年にコロンビア大学(米ニューヨーク)に留学をはさみ、2014年より現職(東京大学薬学部教授)。専門分野は大脳生理学。とくに海馬の研究を通じて、脳の健康について探究している。2018年よりERATO脳AI融合プロジェクトの代表を務め、脳とAIの臨界点を模索している。文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2008年)、日本学術振興会賞(2013年)、日本学士院学術奨励賞(2013年)などを受賞。著書に『海馬』『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』などがある。

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幼少期からの英語学習は本当に必要? 脳研究者・池谷裕二先生が語る「早期英語教育の真実」

グローバル化が進む現代では、幼少期からの早期英語教育に注目が集まっています。その一方で、「日本語も未熟な段階から別の言語を学ぶのは問題ないのだろうか」「早くから英語を学んでも、使わなければ忘れてしまうのでは?」など、幼いころから英語を学ぶことに不安を抱く保護者の方も少なくないようです。そんな早期英語教育の疑問に対し、脳研究者で東京大学薬学部教授の池谷裕二先生が答えます。

「英語ができる」自信は子供の可能性を広げる

―― 早期英語教育については意見が分かれるところだと思います。池谷先生から見て、英語教育は幼少期から行うべきなのでしょうか?

池谷裕二先生(以下、池谷):大前提として、早期英語教育の必要性は個人の目標によって異なります。海外旅行で困らない程度の語学力を身につけたいというだけであれば、早期英語教育が必ずしも必要とは言えないでしょう。なぜなら、英語は第二言語として後から習得しても間に合うものだからです。この先、人工知能がますます発達してリアルタイムでの翻訳が可能になれば、英語を話せる必要性すらなくなりますしね。もしも、英語をファーストランゲージとして身につけたいとか、日本語と英語それぞれの感覚で思考できるようになりたいというのであれば、早期英語教育が必要だと思います。
ただ、そういった必要性とは別に、「英語ができる」ということが子どもの自信につながったり、可能性を広げたりするという点でも早期英語教育は重要です。私自身もそうでしたが、苦手意識があると英語が必要な場面ではどうしても消極的になってしまうんです。しかし、英語に対して自信があれば、自分の可能性を狭めることなく積極的にコミュニケーションがとれますよね。
また、理屈では分かっても、文化の違いを自分の感覚として理解するのは難しいですよね。その点、幼少期から英語という異文化に触れていれば、感覚的にも学ぶことができます。そういった観点からいっても、早期英語教育は意味があるのだと思いますね。

―― 具体的に何歳くらいから英語教育を始めるべきでしょうか?

池谷:バイリンガルのようになりたいのならば、早ければ早いほどいいですね。英語に触れる量によっても変わってくるので、英語漬けの環境であれば、2歳くらいから始めても十分だと思います。遅くとも9歳ころまでには始めたいですね。できるだけ幼いうちから、英語や外国文化と触れ合う環境に身を置いた方がいいです。

早期英語教育にデメリットはない

―― 母語である日本語を学習中の段階から英語に触れると、頭の中が混乱したり、脳の発達に影響したりしないのでしょうか?

池谷:そのようなことはありません。世界人口の約50%がバイリンガル、もしくはマルチリンガルであると言われています。もし幼少期に2カ国語以上の言語を学ぶことが脳の発達に悪影響を与えるならば、世界の半数の人が問題を抱えていることになってしまいますよね。
また、世界的に見ると、日本のようにひとつの言語だけを使うというのはむしろ少数派です。世界には約6,000もの言語があるので、「複数の言語を話せる/理解できる」というのは一般的なことだと私は思います。日本では多言語を操る人が少ないので、ネガティブな印象が広まりやすいのかもしれませんね。

―― 幼少期から2カ国語を学ぶと言葉の習得が遅れるという話も聞きますが、それは本当なのでしょうか?

池谷:日本語だけを教えていても、習得が早い子もいれば遅い子もいますよね。2カ国語を同時に学ぶ場合、脳の中では2つの言語を細分化して言葉を覚えていきます。そのため、人によっては多少遅れがみられることもあるでしょう。とはいえ、長い人生のうちの最初の半年~1年遅れるだけのこと。過剰に心配しすぎるのは良くないので、お子さまなりの発達スピードなんだと、見守ってあげる気持ちでいるのも大切だと思います。

―― 幼少期に英語をマスターしても、継続して使い続けなければ忘れてしまいませんか?

池谷:例えば、幼少期を海外で過ごした人でも、日本に戻ってから英語の勉強を一切しなければ、英語は下手になっていきます。なので、できるだけ英語を使い続けることが望ましいでしょう。ただ、もし間が空いてしまっても、幼少期にきちんと言語を「獲得」できている人は、学び直したときの戻りも早いです。私が大学で教えている学生たちを見ていても、幼少期に5年ほど海外で過ごしただけで、今では英語が苦手だという状態だったのに、学会の練習などで再び英語を始めると、伸びが非常にいいということがよくあるんです。私のように中学校から英語を習得した者から見れば、羨ましく感じてしまいます(笑)。

―― では、早期英語教育のリスクやデメリットはどんなことが考えられるでしょうか?

池谷:リスクやデメリットはあまりないと思います。強いて言うなら、ある程度のお金と時間がかかることくらいでしょうか(笑)。ただ、幼少期のうちにお金をかける方が将来的なメリットは大きいと思いますね。大人になってから学ぶよりも、習得率がいいですから。

学習ポイントは「体を動かしながら行う」「子ども同士で英語を話す」

―― 幼少期の英語教育で、英語をより確実に身につける方法などはありますか?

池谷:最近発表された早期英語教育に関する論文には、「英語をフィジカルなエクササイズと合わせて行うと習得が早く、その後の定着も良い」とありました。幼児にとって、体を動かすというのは基本的なことですよね。机に向かって英語を勉強するより、音楽や体操に合わせた方が身につきやすいというのは、納得感がありました。 また、子どもは大人ではなく、ほかの子どもの言うことをよく聞くように遺伝子に組み込まれているので、英語を話す友達がたくさんいる環境に入れてあげるのもいいと思います。

―― なぜ、ほかの子どもの話を聞くようになっているのでしょうか?

池谷:人間が狩りをしながら暮らしていた時代、大人が子育てできる環境ではなかったんです。父親は猟に行き、母親は乳飲み子に母乳を与えるか妊娠している状態でしたから。そのため、子どもはお兄ちゃんやお姉ちゃんの言うことを聞いて育つようになり、子どもたちのコミュニティの中でマナーなど社会的な学習をしていきました。そのような過程から、「子どもは子どもの言うことをよく聞くようになった」といわれています。例えば、海外に移住した子どもは、親と話す日本語よりも友達と話す英語の方が上達する傾向があるんですよ。それは、親とよりも、子ども同士のコミュニケーションを重視しているからなんです。

―― フィジカルなエクササイズと合わせて学ぶほか、子ども同士で英語を話すことが重要なのですね。

池谷:そうですね。集団生活の中ではジェスチャーや表情などから相手の感情を読み取る力なども育まれます。ネイティブの先生がそばにいれば、外国人ともより深いコミュニケーションを図れるようにもなるかもしれません。単純な語学の習得というだけでなく、幼いうちから英語を学ぶことは子どもの成長に大きなメリットになるのではないでしょうか。

早期英語教育には、英語力を身につける以外にもさまざまなメリットが存在します。異文化理解を深め、自信をもって英語でコミュニケーションをとれるようになるために、幼少期から英語に触れさせていきたいものです。

学習法は、習い事や教材を利用するほか、英語のCD・DVDを流すなどさまざまな選択肢が存在します。ただ、一定以上の英語量に触れさせ、英語を話す環境下に身を置くとなると、「インターナショナル幼稚園」や「プリスクール」が最適かもしれません。

早期英語教育を中心とした独自のカリキュラムを採用しているのが、バイリンガル幼児園「Kids Duo International」。卒園までの4年間で約3,000時間を英語で過ごすため、英語教育に関心の高い保護者の方から注目を集めています。
40年間にわたって培われた教育カリキュラムでは、語学以外の面にも注力。バイリンガル講師とのコミュニケーションや知能教育のほか、クラスメイトとの遊びを通して英語圏と日本の文化に触れられるなど、日本語と英語をバランスよく学ぶことも大切にしています。

「Kids Duo International」へ見学に来ませんか? 入園説明会受付中!

「Kids Duo International」は現在、東京、神奈川、千葉、大阪に園舎があり、8園合わせて2,000名を超える子どもたちが通園しています。さらに、2021年春に埼玉県初となるKDI武蔵浦和が開園予定です。
各施設の雰囲気や特徴を知るには、実際に足を運んで見学し、説明を聞いてみることが一番。「Kids Duo International」の入園説明会では、実際に教えている先生が説明し、さらにはどんなカリキュラムを行っているのかを一部模擬体験することもできます。これからお子さんの教育を考える方、バイリンガル幼児園という選択肢に興味を持たれた方は、ぜひ一度「Kids Duo International」の入園説明会に足を運んでみては?

※説明会は園舎ではない場所で実施される場合があります。

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学 薬学部 教授
1970年生まれ。1998年に東京大学にて薬学博士号を取得。2002~2005年にコロンビア大学(米ニューヨーク)に留学をはさみ、2014年より現職(東京大学薬学部教授)。専門分野は大脳生理学。とくに海馬の研究を通じて、脳の健康について探究している。2018年よりERATO脳AI融合プロジェクトの代表を務め、脳とAIの臨界点を模索している。文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2008年)、日本学術振興会賞(2013年)、日本学士院学術奨励賞(2013年)などを受賞。著書に『海馬』『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』などがある。